東日本大震災:大阪府「100ベクレル」がれき受け入れ 焼却ガス汚染懸念 処理拒否の市町村も

 東日本大震災による岩手県の災害廃棄物(がれき)について、独自に処理基準を定めて年明けから受け入れを進める大阪府に対し、放射性物質への懸念や不安の声が上がっている。環境省は「99・99%除去できる」としているが、大気中への放出は避けられないとの意見もある。一方、がれきの処理に苦しむ岩手県内の自治体は早期の受け入れを期待している。

 環境省は、排ガス中の粉じんを取るバグフィルター(ろ過式集じん)装置などがある一般廃棄物の焼却施設なら、固体化した塩化セシウムの粒子は99・99%以上除去できるとした。大阪府は、府内46施設のうち39施設で焼却可能としている。

 山内知也・神戸大教授(放射線計測学)は今月、府が定めた1キロ当たり100ベクレルのがれきを燃やすと仮定し、府内のある焼却施設で放出量を試算した。その結果、セシウムを99・99%除去できたとしても、1日120トンペースで1年間焼却を続けた場合、約44万ベクレルが大気中に放出されると評価した。山内教授は「周辺住民が受ける線量は低いかもしれないが、放出を完全に止めることはできず、焼却を続ければ放出量も増加する」と指摘する。
 また、山内教授は、排ガス中のセシウムがほぼすべて塩化セシウムになり、固体化するという環境省の考え方についても、「別の化合物やイオンの状態で存在する可能性が高い。だとすればバグフィルターで本当に除去できるか分からない」と懸念する。

 住民の不安も高まっている。「生活協同組合コープ自然派ピュア大阪」(大阪府茨木市)の黒河内繁美理事は「少量のサンプル調査では放射性物質を正確に把握できず、過小評価の恐れがある。がれきは、汚染を広げないよう現地で処理すべき」と指摘する。

 環境省が今年10月に実施した調査では、全国の市町村のうち、受け入れに前向きだったのはわずか54。同府箕面市の担当部長は10月中旬、市のホームページ上で「安全性が確認されるに至っていない。『受け入れはしない』と回答する」とし、今月27日にも「基本的スタンスは変わらない。このままでは市民の理解を得られる説明ができない」と話した。

 一方、大阪市橋下徹市長は、安全性が確認できれば受け入れるよう担当部局に指示。「大阪府市統合本部」で受け入れ場所などを検討する方針だ。府と市は今月16日、環境省に海面埋め立てに関わる指針を作るよう申し入れている。

 岩手県内で発生したがれき約476万トン(環境省調べ)のうち約100万トンを抱える陸前高田市の久保田崇副市長は「とにかく早く処理したいが、手いっぱいの状況。このままだと終わるまで2〜3年はかかる。大阪府が受け入れてくれればありがたい」と話している。【須田桃子、日野行介】

毎日新聞 2011年12月28日 大阪夕刊
http://mainichi.jp/kansai/news/20111228ddf041040020000c.html