保管の焼却灰1万5000トン余に

一般ごみを燃やした灰から放射性物質が検出されている問題で、関東と東北の清掃工場では合わせて1万5000トン余りの焼却灰が埋め立てできず、一時的に保管されていることが分かりました。多くの自治体などは、国が処理方法として示しているセメントで固める施設がないことや、住民が埋め立てに反対していることなどを理由としていて、放射性物質を含む焼却灰の処理が深刻な問題になっていることが明らかになりました。

一般ごみを燃やした灰について、環境省は、放射性セシウムの濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超え10万ベクレル以下の場合は、灰をセメントで固めたうえでコンクリートの容器に入れるなどすれば埋め立てができるとする方針を示しています。ことし8月に公表された調査によりますと、灰からこうした放射性セシウムが検出された清掃工場は、関東と東北にある7つの都と県の合わせて42の施設となっています。NHKが、これらの施設を運営する合わせて35の自治体や事務組合などに取材したところ、埋め立てできずに一時的に保管されている焼却灰は合わせて1万5580トン余りに上っていることが分かりました。複数回答で理由を聞いたところ、灰をセメントなどで固める施設がないことを挙げている自治体などが29と最も多く、国が方針の中で示している方法が設備上の理由から現実的でないことが浮き彫りになりました。また、住民の反対によって埋め立てできないという自治体などが8つ、リサイクル業者などから引き取りを拒否されているという自治体などは4つとなっていて、放射性物質を含む焼却灰の処理が各地で深刻な問題になっていることが明らかになりました。この問題では焼却灰が保管できる倉庫が満杯になるおそれがあるとして、可燃ごみの収集日を減らしたり、木の枝や落ち葉などに放射性セシウムがついている可能性が高いとして分別収集を始める自治体などが出てきています。

家庭などから出される一般ごみを燃やした灰に放射性物質が含まれている問題が明らかになったのは、ことし6月に東京・江戸川区の清掃工場で、一般ごみを燃やした灰から1キログラム当たり9740ベクレルの放射性セシウムが見つかったのがきっかけでした。環境省が、東北や関東甲信越などの16の都県にある焼却施設で一般ごみを燃やした灰を調査したところ、岩手、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、東京の7都県にある42の施設で、1キロ当たり8000ベクレルを超える放射性セシウムが検出されました。これを受けて環境省は、専門家による検討を踏まえて、焼却灰に含まれる放射性セシウムが8000ベクレル以下であれば、そのまま埋め立てを認める方針を示すとともに、8000ベクレルを超えて10万ベクレル以下の場合は、地下水の汚染を防ぐため、灰をセメントで固めたうえで鉄筋コンクリートなどの容器に入れるなどすれば、埋め立てができるとする方針を示していました。しかし、こうした設備をもともと備えている施設はほとんどないうえ、新たに整備するにも、経費やスペースの確保の問題などから各自治体や組合は難しいとしています。また、埋め立てを行う処分場周辺の住民などから、放射物質を懸念する声が上がっていることも焼却や埋め立てが進んでいない大きな理由になっています。このため、環境省は、自治体が行う住民説明会に職員を派遣して理解を求めるとともに、8000ベクレルを超える焼却灰の新たな処理方法の検討を始めています。こうした放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超える焼却灰や汚泥について、政府は、来年1月以降は「指定廃棄物」に指定して国の責任で処理を行うとする方針案を今月になってまとめましたが、国の対応がごみ処理の実態に追いついていない現状が浮き彫りになっています。

NHK NEWS WEB 10月20日 15時43分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111020/t10013396861000.html