(東京都大田原市)東京新聞:最終処分場への焼却灰搬入停止 一時保管も限界間近

 ごみの焼却灰を埋め立てている大田原市の廃棄物最終処分場で、放射性物質を含む焼却灰の搬入が住民の反対で、約四カ月も止まっている。灰を保管するごみ処理施設も許容量が限界に近づき、同市と那須町は二十日から、家庭ごみの回収日を週二回から一回に減らす。国による除染準備が進む一方で、汚染された廃棄物を抱える現場は混迷している。 (神田要一)

 「埋め立てられた焼却灰が、この場所にずっとあるのは不安。放射性物質が出ている以上、率先して受け入れることはできない」

 大田原市の最終処分場・黒羽グリーンオアシスから約一キロの同市川田地区。住民の無職男性(66)はそう語り、眉をひそめた。

 処分場を管理する那須地区広域行政事務組合によると、大田原市那須町から回収したごみは、同市内のごみ処理施設・広域クリーンセンター大田原で焼却し、灰を処分場に埋め立てていた。一日平均で燃え殻の「主灰」が約十トン、ばいじんなどの「飛灰」は約四トン排出される。

 しかし、飛灰から国の基準(一キログラム当たり八〇〇〇ベクレル)を超える一万三五八〇ベクレルの放射性セシウムが検出され、川田地区の住民は「処分場に持ち込まないで」と態度を硬化。六月下旬から搬入をやめ、ごみ処理施設内で保管せざるをえなくなった。組合の担当者は「住民には放射能自体がノーということ。説明をしようにもできない」と頭を悩ませる。

 環境省は八月末、八〇〇〇〜一〇万ベクレル以下の焼却灰はセメントで固め、雨水を防ぐ屋根や遮水シートなどを設けて埋め立てる処分方法を発表した。今月七日現在、同組合の検査で放射性セシウムは一キログラム当たり六〇六〇ベクレルまで下がった。組合側は「国の基準以下の灰だけでも処分を認めてほしい」と主張するが、理解は得られていない。

 主灰は民間業者が引き取っているが、保管している飛灰の量は約三百九十トンに上り、置き場所に余裕がなくなっている。こうした事態を受け、大田原市那須町は家庭ごみの回収を抑えることに。組合も、放射性物質の濃度が比較的高い草木や落ち葉の受け入れをやめ、ごみの減量に懸命だ。

 来年一月に施行される放射性物質汚染対処特別措置法では、著しく汚染された廃棄物を「指定廃棄物」とし、「国の責任で保管や処分をしていく」と基本方針を示した。環境省の担当者は「国の検討会で、焼却灰は八〇〇〇ベクレル以上の場合に指定廃棄物とする方向で検討している」と説明する。

 ただ、「指定廃棄物の処理は排出された都道府県で行う」という方針も盛り込まれており、住民の要望と処理方針をめぐって今後、混乱も予想される。

(TOKYO Web)2011年10月20日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20111020/CK2011102002000067.html