女川町の災害廃棄物の処理、東京23区と多摩地区の焼却炉で受け入れの見通し

 東日本大震災にともなって発生した災害廃棄物の処理について、東京都は岩手県宮古市に続いて、宮城県女川町についても受け入れを検討しており、早ければ来週にも処理計画が発表される見通しとなっている。その是非は別の機会に譲るとして、まずはこの間の取材で知り得た計画の概要を報告する。

 関連自治体によれば、東京都の計画は、女川町で発生した災害廃棄物約44万4000tのうち、約10万tを今後2年間で受け入れ、東京23区および多摩地区の一般廃棄物のゴミ処理施設で焼却。焼却処理で発生する焼却灰は東京・江東区にある海面埋め立て処分場「中央防波堤埋立処分場」と多摩地区・日の出町にある二ツ塚処分場に埋め立てるというもの。現在関係機関との調整中という。

 東京23区清掃一部事務組合によると、受け入れ対象となる廃棄物は木くずが中心で、プラスチックについても全体の18%以下であれば引き取る考えだ。23区と多摩地区の受け入れ量の分担はそれぞれ約5万t。ただし、東京23区の焼却施設の処理能力は「故障率などを加味すると、平均能力は日量8000〜9000t。(ゴミ量は変動するため)受け入れは時期をみながら余裕分で対応するため、最大で日量150t程度。廃棄物の性状にもよるため実際にはそれほどできないのではないか」(同組合)というから、処理量は計画より少ない、あるいは処理期間が延びる可能性もある。

◆最大で440ベクレル

 災害廃棄物の広域処理が進まない原因となっている放射能汚染の問題については、女川町が廃棄物の放射性セシウムの分析調査を実施している。これは現時点では公表されていないが、筆者が確認した資料によれば、もっとも放射性物質の含有量が高かったのは繊維くずで1kgあたり440ベクレル。それ以外では畳が同220ベクレル、廃プラが同100ベクレル、紙くずが同77ベクレル、木くずが同69ベクレルとの結果だった。宮城県でも11市町の12カ所で核種分析(放射性物質の種類と量の分析)を実施しており、現在「調査結果待ち」(震災廃棄物対策課)という。正式発表のさいにはそれについても公表の見通しだ。

 東京都はすでに実施している都内の産業廃棄物処理業者における宮古市の災害廃棄物の処理において、廃棄物の受け入れ時の放射線量について、焼却後の飛灰で1kgあたり8000ベクレル以下を基準としており、「搬出前に空間線量などから調査しており、(核種分析結果に基づく受け入れ濃度の)基準は設けてない」(一般廃棄物課)という。

 一方、東京23区清掃一部事務組合は東京23区の自治体の焼却炉における受け入れ基準について、「国の広域処理のガイドラインで焼却灰で1kgあたり8000ベクレル以下を基準としており、それに従っている。環境省の試算では廃棄物の放射線量は飛灰へ最大33倍に濃縮されるということですから、逆算して入口で1kgあたり240ベクレルを超えてないことを基準としています」と話す。

 同組合にその基準を超えるものがあることを伝えて対応を聞くと、「それは存じておりませんが、若干付着するもので高いものがあるのかもしれないことは考えられる。広域処理ガイドラインに書かれていますから、そういうものは排除するしかない」との考えだ。

 実施スケジュールは、早ければ12月にも都内で焼却実験を実施し、年明け以降に少しずつ処理を開始する線が濃厚だ。

 今回の東京都の計画が宮古市からの災害廃棄物の受け入れ処理と違うのは、住宅密集地に立地された焼却炉で処理をするということだ。周辺に放射性物質が飛散する可能性を心配する声が多い状況で、前回に続いてトップダウン方式で決定事項だけ伝える形で都民の理解が得られるのだろうか。

 関係自治体によれば、「早ければ来週にも正式に発表する」ということだが、発表内容しだいでは実施が難航することも考えられる。

ECO JAPANリポート 2011年11月19日
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20111118/109948/?ST=print