(埼玉県)たまる焼却灰 県東南部、放射能問題で搬送停止

 県東南部の5市1町でつくるごみ処理の広域組織「東埼玉資源環境組合」(管理者・高橋努越谷市長)の第1工場(越谷市増林)に、放射性物質の暫定基準値以下なのに運び出せないごみ焼却灰約2500トンが一時保管され、仮置き場が来年1月末にも満杯になることが9日、分かった。これまで焼却灰を埋め立てていた秋田県大館市の最終処分場が、県外からの受け入れを停止したためだ。このまま焼却灰がたまり続ければ、ごみ収集ができなくなる可能性も出てきた。組合は新たな処分場を見つけるため、交渉を続けている。

 東埼玉資源環境組合は草加市越谷市八潮市三郷市吉川市松伏町の5市1町(人口約89万人)から排出されるごみを処理している。7月〜10月の測定では、焼却灰の放射性セシウムは国の暫定基準値(1キログラム当たり8千ベクレル)の半分以下の1キログラム当り2500〜3600ベクレルで埋め立てが可能な数値だった。

 だが、同じ処分場を利用していた千葉県流山市大館市内に基準値を超える焼却灰を運んだことをきっかけに、業者が7月14日から受け入れを停止。そのため基準値以下でも焼却灰を搬出できなくなってしまった。同工場でごみを燃やす際に出る廃ガスに含まれる焼却灰は1日当たり約30トン。組合は灰を袋詰めにし、工場内の空きスペースに保管するという綱渡りの対策を取っている。

 9日現在で一時保管されている焼却灰は約2498トン。工場内の車が走る通路脇や作業スペースにはシートに覆われた袋が所狭しと並ぶ。ごみ収集車を洗う場所さえも保管所としたが満杯となり、隣の堆肥を作る施設にまで仮置き場を拡張した。だが、ここも「1月末にはいっぱいになる」と担当者は頭を抱える。

 組合は大館市の業者に再開を要望するとともに、新たな受け入れ先を探している。しかし、焼却灰の基準を国より厳しくする自治体もあり、難航しているのが実情という。

 そこで、同組合は5市1町の住民に放射性物質が蓄積されている草や枝などのごみを抑制するよう呼び掛けている。より取引先を見つけやすくするため、最終処分場に埋める前の中間処理を行う装置を今月末にも設置する予定になっている。

 担当者は「一時保管できるスペースは限界に近づいており、このままではごみ収集ができなくなってしまう可能性もある。最悪の事態を避けるため必死に努力している。国や県はこの現状を認識して、基準内であればきちんと受け入れるよう指導してほしい」としている。

埼玉新聞 2011年11月10日(木)
http://www.saitama-np.co.jp/news11/10/09.html