がれきの広域処理に不安の声

東日本大震災の被災地で発生した大量のがれきを被災地以外の自治体で受け入れる「広域処理」を進めようと環境省が開いた会議で、受け入れを検討している自治体からは、放射性物質に対する不安の声が住民から上がっていることなどを背景に、処理が進められないという意見が相次ぎ、環境省は住民説明会に専門家を派遣するなどの対策を取ることになりました。

地震津波で大量に発生したがれきの処理を進めるため、環境省は、焼却した際の灰に含まれる放射性セシウムの濃度が、1キログラム当たり8000ベクレル以下のものについては、埋め立てができるなどとする指針を示すとともに、被災地以外の自治体に受け入れてもらう広域処理を進める考えを示しています。しかし、自治体の中には、放射性物質に対する不安の声が住民から上がっていることなどから受け入れが進まず、東北地方以外の自治体で正式に受け入れが決まったのは、岩手県宮古市のがれきを東京都が受け入れるケースだけにとどまっています。こうした状況を受けて、東京で開かれた会議には、43の都道府県と74の市区町村の担当者などおよそ170人が出席し、細野環境大臣が「被災地では災害廃棄物の処理が、復旧復興の大きな前提と同時に、関門になっています。この関門を乗り越えるためには、皆さんの力がどうしても必要です。環境省の責任で全力で対応し、皆さんの気持ちをむだにすることがないように努力をすることを約束します」とあいさつしました。会議では、岩手県宮城県だけでも2040万トン余りのがれきが出たものの、多くの処理が進んでいない現状が報告されたのに続いて、受け入れを検討している自治体からは「住民の理解がなかなか得られない」といった意見や「本当に健康被害が出ないのか」といった質問が相次いだということです。これを受けて環境省は、今後、住民説明会に専門家を派遣することや、放射性セシウムの濃度が国の目安を超えていないがれきについては、焼いたり埋めたりしても周辺の住民に健康被害の心配はないことを分かりやすく伝えるパンフレットを作る方針を示し、自治体側に住民の理解を得るための協力を求めました。

東京都では先日、岩手県宮古市のがれきを受け入れることを表明し、東北以外の自治体として初めて広域処理に協力することを決めました。これに対して、都民から寄せられた電話やメールのうち95%は反対の声だったということです。東京都の担当者は「全国の自治体で受け入れの動きが進めば、被災地の復興に大きな力になる。ただ、東京都でも住民から抗議の問い合わせが相次いでおり、住民に丁寧に説明をしていくことが大切だ」と話していました。また、鳥取県の担当者は「地域の理解をどのように得るかというのが最大のポイントだが、残念ながら会議では参考になる具体的な方法については示されなかった。また、単純に数字で安全を示しているが、数字だけでは地域の理解を得るには難しく、国にはより分かりやすく具体的な説明を求めたい」と話していました。静岡市の担当者は「がれき処理を受け入れた場合、本当に健康被害が出ないのか、詳しい説明が欲しい。また、市民からは『放射能をばらまく気か』などという厳しい苦情も寄せられているが、被災地の復興のためにも、地域の理解を得ながら協力していきたい」と話していました。北九州市の担当者は「きょうの会議では、環境大臣が、国が責任を持って住民に説明していくと強い決意を表明し、非常に意義深い会議だった。住民説明の場に専門家を派遣するという話も、とても心強く思った」と話していました。

NHK NEWS WEB 10月4日 20時13分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111004/t10013035402000.html