(神奈川県)放射線量の各測定値 地図に落とすと… 中原で「高め」目立つ

 福島第一原発の事故を受け、川崎市は十〜十一月に小中学校や公園など約四百五十カ所で放射線量を一斉測定し、施設名と数値をホームページなどで公表している。しかし、「数字が羅列されているだけで分かりにくい」「もっと分析を」などの市民の声が聞こえてくる。そこで「もっと分かりやすく」を目指し、公表されている数値を地図上に落とす作業を試みた。すると、多摩川沿いの地域で線量が高めの地点が目立つなど、ぼんやりとだが、特徴的な傾向が浮かび上がってきた。 (山本哲正)

 市の調査では、雨どい下など、除染対象となる毎時〇・一九マイクロシーベルト超の「ホットスポット」ばかりが注目された。しかし、今回地図に落とす作業では、そうしたいかにも放射線量が高くなりそうな地点の数値を除外し、校庭や園庭、公園などの中央部の数値(いずれも地表五センチの計測)に限定して調べた。

 すると、毎時〇・一〇マイクロシーベルト以上の地点が約三十地点あり、半径約一キロの円内に四地点と最も多く集中したのは二つの地域だった。

 一つは中原区から幸区にかけての多摩川沿い。もう一つは中原区中央部で、いずれも今回の一斉測定で最高の同〇・一二マイクロシーベルト地点を含み、同〇・〇八〜〇・〇九マイクロシーベルト地点も他地域より目立った。

 汚染の原因を探るのは難しく、市危機管理室も「分からない」として言及していない。しかし、測定値の高い地点の散らばり具合からは、ごみの焼却施設の影響もあり得ると思えてくる。

 例えば、主に北からの風を想定すると、多摩川沿いの集中地は、東京都大田区多摩川清掃工場から半径二・五キロ範囲。同三・五キロに広げると、毎時〇・一〇マイクロシーベルトの地点は三カ所増える。また、川崎区西部でも堤根処理センターの半径二・五キロ範囲には同数値以上の地点が二カ所ある。

 現に市内の焼却施設の焼却灰からは放射性物質を検出。「灰の中にとどまっているから大丈夫」との見方もあるだろうが、より微細な粒子のガスの飛散など、周辺への影響は不透明だ。放射能を心配する母親らは「焼却の影響は気掛かり。東京都で被災地のがれきを受け入れ、大田区で始まった試験焼却も不安だ」と語る。

 中原区中央部は、高津区の橘処理センターから約三・五キロ地点にあたる。地元住民からは「高層ビルが山の役割を果たし、事故後に風に乗って飛んできた放射性物質がビルに当たって落下したのかも」との声もある。

 市危機管理室では「ごみの焼却ではバグフィルターで灰を捕らえるので、周囲に影響は出ないと思う」としている。しかし、ガスなど捕らえきれていない部分がある可能性は認める。

 一方、集中具合は中原区の二つのエリアより低いものの、多摩、高津、川崎区の多摩川沿いでも同〇・一〇マイクロシーベルト以上の計測値が点在。市には、多摩川に沿うとされる「風の道」の影響を示唆する声も出ている。

 市の調査地点は、主に小中学校と保育園、幼稚園を対象としているため、「人口の多い地域に偏りがちで地域的傾向を出すのは難しい」との指摘もある。しかし、市はその偏りを是正するため、学校がない地点の公園でも測定しており、調査地点は全域をまんべんなくカバーするよう工夫されている。

2011年12月15日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20111215/CK2011121502000053.html