汚泥焼却灰に自治体「困った」 処理進まず、用地確保も難航

 首都圏の自治体が放射性物質を含んだ下水汚泥の焼却灰の処理に頭を悩ませている。政府は放射性物質が一定以下ならば、埋め立てができるとの指針を出している。しかし、周辺住民の理解を得ることが難しく、処理のメドがつかないケースが多い。一部の自治体ではごみの焼却灰でも同様の事態に陥っている。

■埋め立てを凍結

 「住民に納得してもらうまで丁寧に説明を続ける」。横浜市の林文子市長は6日の記者会見で汚泥焼却灰の問題について従来の発言を繰り返した。

 下水道を所管する国土交通省は6月、放射性セシウムの濃度が1キログラム当たり8000ベクレル以下の焼却灰は最終処分場で埋め立て処理が可能とする方針を示している。これを受け、市は9月9日、焼却灰を沿岸部の南本牧廃棄物最終処分場で埋め立てることを発表した。

 住宅地から離れているほか、線量は国の埋め立て基準値以下。それでも毎日数十件の苦情が寄せられ、わずか5日で凍結を余儀なくされた。

 福島第1原発の事故後、放射性物質が首都圏でも飛散、雨と一緒に下水に混入した。下水汚泥は焼却した後、処理をすることが多いが、各地でこの焼却灰から放射性物質が検出され、対応に苦慮している。国交省によると、9月16日時点で首都圏の1都3県で処理できずに一時保管している下水汚泥は1万7000トンにのぼる。

 例外といえるのが東京23区。水とセメントを混ぜて固めたうえで中央防波堤の処分場に埋めている。大きな問題になっていないのは、放射性物質の検出前から同処分場で埋め立てていたためだ。

 しかし、大半の地域では汚泥焼却灰は埋め立てずにセメント原料などに再利用してきた。それが放射性セシウムが検出されて以降、業者が受け入れを拒否。国が指針を出しても埋め立て処理ができないケースが多い。

■倉庫に1300個の袋

 都内でも多摩地区では事態は深刻だ。

 「保存場所はもう限界に近い」。府中市郊外にある都の北多摩1号水再生センターの三田村浩昭センター長は焦りの色をにじませる。多摩地区の下水を処理する同施設の倉庫には放射性セシウムを含む下水汚泥の焼却灰が入った約1300個の袋がずらりと並ぶ。

 都は多摩地区の焼却灰を中央防波堤の処分場に埋め立てることを検討。処分場周辺の自治体に理解を求めた。だが放射性物質を含む廃棄物を受け入れると住民の反発が懸念されるため、大田区の松原忠義区長は現時点では「慎重に対応したい」と様子見の姿勢だ。

 全国有数の規模を誇る荒川水循環センター(埼玉県戸田市)でも約3000個の袋が置かれており、毎日約30個ずつ増えている。埼玉県は仮置き場を準備するが、担当者は「整うまで2〜3カ月かかるため、現在の場所が満杯にならないかが心配」と漏らす。埋め立て処分場を新設することについて同県は「立地や予算の問題から難しい」としている。

日本経済新聞 2011/10/8 6:03
http://www.nikkei.com/news/local/article/g=96958A9C889DE1E7E6E1E6E3E3E2E2E5E3E2E0E2E3E39EE5E3E2E2E2;n=9694E3E4E3E0E0E2E2EBE0E0E4E7