放射能基準に自治体困惑 震災ごみ府内受け入れ

 東日本大震災で発生した災害ごみを広域処理する際に環境省が定めた放射能の安全基準に対し、受け入れる方針を示している京都府内の自治体から戸惑いの声が出ている。焼却後の灰は1キロ当たり8千ベクレル以下と決めたが、焼却前の基準を示していないため、燃やしてみないと安全性が分からないためだ。「これでは受け入れは難しい」と難色を示す自治体も出始めた。

 同省は4月、全国の自治体に災害ごみ処理を打診し、京都府内でも4市町1事務組合を含め572団体が「受け入れ可能」と返答した。この際、住民から放射能汚染を心配する声が多く寄せられたため、各自治体では同省が8月に決めた安全基準を示し理解を求めた。

 基準では焼却灰が8千ベクレル以下なら作業員の安全が確保され、埋め立ても可能とした。焼却すれば放射性物質の濃度は高くなるが、▽焼却後は濃度が33倍になる▽一般ごみと混合すれば濃度は低くなる−などとする計算式を提示するのみで、焼却前の基準は示さず、判断を自治体に委ねた。

 しかし、東北や関東では焼却場から8千ベクレルを超える灰が相次いで検出され、埋め立てできない灰の保管場所確保に四苦八苦する状況になっており、年5万トンのがれきを処理する方針の京都市でも、市議から「国の言いなりは危険だ」などと反発の声が出ている。亀岡市も「専門知識のある職員がおらず、計算式を示されても判断できない」と悩んでいる。

 8千ベクレル以下で「安全」という基準にも、南丹市京丹波町船井郡衛生管理組合は「汚染は『皆無』が前提条件。低濃度でも放射性物質の受け入れは想定外で、国に回答した4月から状況は変わった」と受け入れ見直しも示唆した。

 山形県は8月、独自に焼却前の基準を「1キロ当たり200ベクレル以下」に決め、宮城県からの受け入れを始めた。県は「あいまいな基準で燃やして危険な灰が出れば、住民の反対で受け入れは中止になる。それだけは避けたかった」と説明する。

 環境省には自治体から「焼却前の基準を示してほしい」との要望も相次ぐが、廃棄物対策課は「一般ごみを多く混ぜて燃やし、灰の放射能濃度を抑えるなど各自治体で工夫の余地がある。焼却場ごとに事情は異なり、全国一律の基準は決められない」としている。

京都新聞 2011年09月19日 08時53分
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20110919000015