がれき処理 怒る自治体 環境省、回答期限を延期

 ■受け入れ調査「説明足りない」

 東日本大震災で発生したがれきの広域処理が可能か尋ねるため、環境省が全国の自治体に配布した調査書に対し、説明不足のため自治体が反発している。自治体からあまりに問い合わせが多いため、同省は回答期限を延期せざるを得なくなったほか、急遽(きゅうきょ)、がれき処理のためのQ&Aを作成するなど対応に追われている。

 「環境省は無責任で、無能ぶりにあきれる。あまりに地方任せ。処理方針が明確でない。県として意見をまとめてぶつけなくてはいけない」。愛知県の大村秀章知事は17日の定例会見で怒りを爆発させた。

 震災のがれきは宮城、岩手、福島の3県で計約2300万トン発生したと推計されている。同省は震災直後の4月、被災地以外の自治体に受け入れ可能か照会したところ、572市町村から可能とする回答を得ていたが、放射能汚染の不安が高まると、前言を翻す自治体が続出。このため、同省は今月7日、改めて受け入れ意思を聴く調査書を配布した。

 調査書には、(1)受け入れを検討しているか(2)その進捗(しんちょく)状況(3)受け入れ可能な廃棄物の種類(4)1日の処理可能量(5)年間最大受け入れ可能量−などを記入する。

 ところが、「放射能汚染濃度を具体的な数字で示してほしい」「放射能に汚染された焼却灰を安全に処分できるという根拠は何か」など、自治体から問い合わせが相次いだ。

 がれきは放射性物質がごく微量で通常の廃棄物と同様に処理できるとしているにもかかわらず、福岡市は「放射能に汚染された廃棄物の処理技術を持ち合わせていない」と早々に受け入れ拒否を回答した。

 同省は当初、回答の締め切りを今月21日までとしていたが、28日に延期。さらに、がれき処理のための「ガイドラインQ&A」を作成して、自治体の怒りを鎮める措置に出た。

 調査結果について「個別の地方公共団体名は公表しない」とした同省の方針にも疑問の声が出ている。

 愛知県は方針に従い、受け入れ可能な県内の自治体名と自治体数について公表しないことを決めたが、地元住民は「理解できない」と反発。同県愛西市の市議も「市民に情報公開せずに進めるということか」と憤りの声を上げている。

 ただ、被災地に積み上げられたがれきの仮置き場では、自然発火が原因とみられる火災が相次ぎ、有害物質が出る恐れがあるなど、放置しておくにはすでに限界に達している。

 同省は「がれきの広域処理は復旧・復興に向けた要だ」として、受け入れ先の住民の理解を得るため、安全性を説明したパンフレットを作製する予定で、職員を派遣して地元説明会の開催も考えているという。

産経新聞 10月28日(金)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111028-00000130-san-soci