東日本大震災 滞るがれき広域処理 放射能不安ぬぐえず 

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ごみ処理施設に搬入される岩手県宮古市のがれき=東京都大田区

ごみ処理施設に搬入される岩手県宮古市のがれき=東京都大田区

 東日本大震災で生じたがれきの広域処理が、福島第1原発事故による放射能への懸念から滞っている。東京都は11月、国の安全基準に従い、東北地方以外で初めて大規模な受け入れを始めた。一方、ほとんどの自治体が、安全基準の根拠を示すことなどが受け入れの条件とし、慎重な姿勢を崩さない。住民の不安を取り除く丁寧な説明が国に求められる。(東京支社・佐藤健介)

 岩手、宮城、福島の3県では約2300万トンのがれきが出た。被災自治体の処理能力を超え、仮置き場からの自然発火や異臭が深刻だ。平地が少なく新たな処理施設の建設用地確保も難しい。

 国は放射能汚染度の高い福島県分を除く岩手、宮城両県分の2千万トン余りを、3年かけて全国の自治体で分担処理する計画を立てた。だが、環境省が11月に発表した調査結果では、受け入れに積極的なのは計54の市町村と一部事務組合で、4月の調査から10分の1以下に減った。兵庫県の全市町を含む多くの自治体が、放射能拡散への不安から態度を硬化させたためだ。

 東京都は11月に岩手県宮古市がれき処理を始め、来年2月から宮城県女川町からも受け入れる。2013年度までに両県の計50万トンを処理する方針だが、両県の総量のわずか2・4%だ。

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 都が安全性の根拠とするのは、国が専門家の積算などを基に定めた基準。放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8千ベクレル以下の焼却灰は一般のごみとして扱い、最終処分場で埋め立て可能としている。環境省は「8千ベクレル以下の焼却灰の近くで、1日4時間の作業を年間250日続けても健康に影響はない」と説明する。

 都は8千ベクレルを下回るがれきを気密性の高いコンテナで運び入れ、焼却灰も8千ベクレル以下なら処分場に埋め立てる。埋め立ての際は焼却灰を土やシートで覆って飛散や雨水からの放射能漏れを防ぐ。

 都は「作業員以外は処分場に立ち入りできない。排ガスの放射性物質も焼却炉のフィルターで取り除ける。健康に問題はない」としている。

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 だが、国の基準自体への不安は根強い。被災地のがれきを処理する山形県は、埋め立て可能な濃度を4千ベクレル以下とする独自の基準を設定。受け入れに前向きな静岡県も、基準の根拠を明確に示すよう求める要望書を環境省に提出した。

 兵庫県は「濃度でなく総量が健康に与える影響や、放射能が付着した焼却炉のフィルターの処理方法などを示し、安全性を保つことが受け入れ検討の前提」と指摘する。神戸市は「ノウハウがないので、がれきの移動方法など東京都の事例を検討の参考にしたい」と話す。

 環境省は「8千ベクレルはかなり厳しく設定した数値。総量が多くても適切に管理すれば被ばくは防げる」と強調。年内に住民説明用の資料を自治体に配るほか、焼却炉内の作業指針作りなども検討し、受け入れを促す。

(2011/12/07 15:15) 神戸新聞
http://www.kobe-np.jp/news/shakai/0004667268.shtml