(秋田県)焼却灰受け入れ再開遠し

 秋田県忠犬ハチ公の故郷・大館市十和田湖畔の小坂町が、首都圏からの家庭ごみ焼却灰の受け入れを拒否し、行き場のない焼却灰が山積みになっている。東日本大震災の福島第1原発事故に伴って、基準を超える放射性物質に汚染された焼却灰がいつの間にか持ち込まれ、不信が高まったためだ。受け入れが再開できない背景には、反対ムードの過熱がある。

 「(再開は)市民の理解を得ないとできないが、県外からたくさんの声が寄せられると…」と嘆くのは、大館市の環境課。9月17日の住民説明会の直前4日間で、関東や関西を含む抗議電話が約100本入り、応対に忙殺された。説明会への参加者約100人のうち半分は住民以外の人たちだったという。小坂町にも県庁にも抗議の電話やメールが届いている。

 問題となったのは千葉県の流山市松戸市からの焼却灰。放射能が国の基準値(1キロ当たり8千ベクレル)を上回る2万8100ベクレルと1万500ベクレルを示した。排出自治体で保管されなければならない規定だったが、松戸市からの約40トンは連絡が遅れ、小坂町の処分場に埋め立てられてしまった。

 明治時代ごろから鉱山で栄えた大館市小坂町は、鉱山の跡地を全国最大級の処分場として利用し年間9万トンほどの焼却灰を埋め立て処分してきた。焼却灰を送り込んでくるのは7県約30自治体に及ぶ。小坂町は処分業者との契約で、処分量に応じ年間2千万円程度の寄付「協力金」を得ている。

 事故後、処分業者は基準値を上回る焼却灰を埋め立てた地表をコンクリートで覆い、今後の焼却灰受け入れでは排出時と受け入れ時に放射能の二重測定を行う改善策を提示。両市町議会も理解し、受け入れ再開が近いとみられたが、反対ムードの急激な過熱ぶりに「受け入れないという選択肢もある」(小畑元・大館市長)と、両首長とも慎重姿勢に転じた。

 小坂町は業者の改善策にさらに安全を担保する条件をつけさせ、国の動向を見ながら再開の道を探る考えだ。一方、大館市は受け入れ反対派からの要請で開く説明会が続き、当分は出口が見えない。

 国のリーダーシップと科学的な根拠に基づいた基準、そして“助け合いの精神”で、冷静に放射能汚染処理に向かい合う時期に来ていると思う。感情にまかせた抗議行動が問題解決につながるとは思えない。まして住民が率直に考えを表明する機会を、外部の人間が阻害する行為は厳に慎むべきだろう。(秋田支局長 原圭介)

msn産経ニュース 2011.10.20 06:19
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111020/dst11102006230001-n1.htm