愛知、被災地がれき受け入れ量「白紙」 岐阜・三重も慎重姿勢

 愛知県は13日、東日本大震災で発生した岩手、宮城両県のがれき処理で、震災直後の4月に公表した数量を白紙に戻し、ごみ処理施設を管理する県内の市町村や一部事務組合に受け入れ可能かどうかの再調査を始めた。福島第1原発事故による放射性物質の影響が福島県から広範囲に広がり、住民不安が高まっているため。

 県が4月に行った調査で、29の市町村と一部事務組合が「受け入れ可能」と回答。これを受け、県は年間で焼却処理14万トン、破砕処理1万トン、埋め立て処理0・2万トンの受け入れを公表していた。

 県は21日までに環境省へ再調査の結果を報告する方針だが、市町村などは受け入れに慎重姿勢に転じており、4月の公表値より下回る可能性が強まっている。

 環境省の要請を受け、県は13日、がれき処理を話し合う情報連絡会を非公開で開催。県内の41市町村と12の一部事務組合の担当者が出席した。

 出席者らによると、会合で、県や環境省の職員が「被災地から搬出する前に放射線を測定するので、基準値を超えるがれきが運ばれることはほとんど考えられない」と受け入れに理解を求めたが、市町村の担当者からは「焼却後に基準を超えたら、どうすればいいのか」などの質問が相次いだという。

 会合後、尾張地方のある担当者は、本紙の取材に自治体名を拒んだ上で「率直に言って、どこも受け入れは難しいと思う」と話した。

 主催した県環境部の担当者は「4月の調査はいったん白紙。全国で放射能汚染を心配する声が出て、各自治体は慎重になっている」と分析している。

 中部地方では岐阜県も13日、受け入れを検討する8市と2つの事務組合の担当者を集め、国の協力要請を伝えた。4月の調査で「受け入れ余力がある」と回答した別の4市と4つの組合は前言を撤回した。

 13市町が受け入れ姿勢だった三重県も「慎重な姿勢に転換した自治体が多い」と話している。

 東日本大震災では推計2300万トンのがれきが発生。がれき処理が進まず、復興の妨げになっているとして、環境省は今月4日、被災3県と沖縄県を除く43都道府県に受け入れを要請し、再度の調査を求めていた。福島県のがれきは国が県内で処理する。

 【災害廃棄物の放射能濃度の基準値】 国は東日本大震災で生じた災害廃棄物の指針で、焼却灰1キログラム当たりの放射性セシウムの濃度が8000ベクレル以下の場合、一般廃棄物最終処分場で埋め立て処分が可能と定めている。焼却した場合、放射性物質の濃度は平均で33・3倍に濃縮されるため、焼却前には1キログラム当たり240ベクレル程度以下が埋め立て処分が可能な限度と推測される。だが、濃縮率は材質によって異なるため、国は焼却前の基準となる数値を明確にしていない。

中日新聞)2011年10月14日 10時36分
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011101490090433.html